プラットフォームビジネスとは、商品・サービスの提供者と利用者をつなぐためのプラットフォームを提供するビジネスモデルです。さまざまなビジネスモデルが登場するなかでも、プラットフォームビジネスはとくに注目が高まっています。
しかし、プラットフォームビジネスがそもそもどのようなビジネスなのか、具体的に知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事ではプラットフォームビジネスについて知りたい方や実際にプラットフォームビジネスを立ち上げたい方に向けて、概要・種類・収益モデル・メリットデメリット・成功事例など、詳しく解説します。
プラットフォームビジネスとは
プラットフォームビジネスとは、商品・サービスを販売・提供したい「提供者」とその商品・サービスを購入・利用したい「利用者」をつなぐための、プラットフォームと呼ばれる「場所」を提供するビジネスです。
プラットフォームを運営する事業者は「プラットフォーマー」と呼ばれます。
一般的なビジネスでは、自社の商品・サービスを顧客に直接提供します。一方のプラットフォームビジネスでは、自社の商品・サービスを提供するわけではなく、あくまでもプラットフォームという場所を提供し、商品・サービスを提供するのは第三者の企業や個人です。
例えば、大手ECサイト「楽天市場」も、商品を販売したい企業と商品を購入したい消費者をつなぐプラットフォームビジネスのひとつです。
プラットフォームの種類
プラットフォームビジネスは大きく4種類に分けられます。それぞれの種類について1つずつ詳しくみていきましょう。
仲介型プラットフォーム
仲介型プラットフォームは、ユーザーの需要と供給をマッチングさせるプラットフォームのことです。
具体的には「Amazon」「楽天市場」といったECサイト、「クラウドワークス」「ランサーズ」といったスキルをシェアするクラウドソーシングサイト、「メルカリ」「ラクマ」といったフリマアプリや、などが挙げられます。
例えば、Amazonでは「商品を売りたい企業」と「商品を買いたい消費者」の需要と供給をマッチングさせています。
コンテンツ型プラットフォーム
コンテンツ型プラットフォームは、ユーザーにコンテンツを提供するプラットフォームのことです。
具体的には「Spotify」「Apple Music」といった音楽配信サービス、「Netflix」「Prime Video」「U-NEXT」といった動画配信サービス、「Instagram」「YouTube」といったSNSなどが挙げられます。
さらにコンテンツ型プラットフォームは、音楽配信サービスや動画配信サービスのように、プラットフォーマー経由でコンテンツが提供されるタイプと、SNSのようにユーザーによってコンテンツが蓄積されるタイプに分かれます。
OS型プラットフォーム
OS型プラットフォームは、第三者が開発したアプリやサービスを提供するプラットフォームのことです。
具体的には「App Store」「Google Play」といったアプリストア、「iOS」「Android」といったOSなどが挙げられます。
ソリューション型プラットフォーム
ソリューション型プラットフォームは、特定の機能を搭載したツールを提供することで、ビジネス活動を支援するプラットフォームのことです。
具体的には「Airレジ」「スマレジ」といったPOSシステム、「PayPay」「楽天ペイ」といった決済システムなどが挙げられます。
プラットフォームビジネスの収益モデル
プラットフォームビジネスの収益モデルは主に5つあります。それぞれの収益モデルについて詳しくみていきましょう。
手数料モデル|取引成立時に手数料を徴収する
手数料モデルは、プラットフォーム上での取引が成立した際に、手数料を徴収する収益モデルです。プラットフォームビジネスの多くで採用されており、最も基本的な収益モデルといえます。
例えば、手数料モデルが採用されている「メルカリ」では、取引成立時に取引金額の10%を販売手数料として徴収しています。
このように、取引金額に応じて一定のパーセンテージで手数料を徴収するタイプにくわえて、取引1件に対して定額の手数料を徴収するタイプの2つがあります。
サブスクリプションモデル|定額の利用料金を徴収する
サブスクリプションモデルは、ユーザーに定額の利用料金を支払ってもらう収益モデルです。音楽配信サービスや動画配信サービスなどで多く採用されています。
例えば、サブスクリプションモデルが採用されている「Netflix」では、月額790円~を支払うことで、映画・ドラマ・アニメなどが見放題になります。
プラットフォーマーとしては、毎月もしくは毎年一定の利益を得ることができるため、ビジネスとして安定しやすく、将来の収益予測がつきやすい点もメリットです。
従量課金モデル|利用分に応じて利用料金を徴収する
従量課金モデルは、ユーザーが利用した分だけ利用料金を徴収する収益モデルです。多くのSaaSサービスで採用されています。
具体的には、メール配信システムのように、月あたりの配信数によって料金が発生するといった例が挙げられます。
ユーザーにとっては利用した分だけの料金を支払えばよいため、無駄なコストが発生しにくい点が魅力です。その反面、プラットフォーマーにとっては利益が安定しにくく、将来の収益予測が難しい点などがデメリットとして挙げられます。
フリーミアムモデル|基本機能を無料で提供しプレミアム機能を有料で提供する
フリーミアムモデルは、基本的な機能やサービスを無料で提供し、プレミアム機能や上級コンテンツを有料で提供する収益モデルです。
例えば、フリーミアムモデルが採用されている「YouTube」では、無料で動画の投稿や視聴ができ、有料プランに登録すると「広告費表示」「バックグラウンド再生」「オフライン視聴」などの機能が利用可能となります。
フリーミアムモデルは基本機能が無料で利用できるため、利用ハードルが低くユーザーを獲得しやすい点が魅力です。ただし、無料の範囲内で機能・サービスを利用するユーザーが多いため、有料プランへ移行してもらうための工夫が必要となります。
広告モデル|広告枠を設置し広告主から広告費を徴収する
広告モデルは、プラットフォーム上に広告枠を設置し、広告主から広告費を徴収する収益モデルです。プラットフォームのユーザーは基本無料で利用できるため、ユーザーを獲得しやすい傾向があります。
例えば、「Instagram」では、フィード投稿・ストーリーズ・検索タブなどのさまざまな場所に広告枠が設けられています。Instagramは国内でも月間アクティブユーザーが3300万人を超えるため、広告の効果も高く、多くの企業がInstagram広告を活用しています。
ただし、ユーザー数の少ないプラットフォームでは、多くのユーザーを抱えるプラットフォームに比べて広告の効果が薄いため、徴収できる広告費が少なかったり広告主がなかなか見つからなかったりするケースも考えられるでしょう。
プラットフォームビジネスのメリット
プラットフォームビジネスのメリットは3つあります。それぞれのメリットについて1つずつ詳しく解説します。
開発コストを抑えられる
プラットフォームビジネスでは、あくまでも提供者と利用者をつなぐプラットフォームを提供するため、自社の商品・サービスを開発するコストがかかりません。商品の仕入れや配送、新商品の開発といったコストもかからず、基本的に1度軌道に乗れば大きな改善は必要ないビジネスモデルと言えます。
また、プラットフォームはインターネット上に設置するため、プラットフォームビジネスをはじめるための店舗やオフィスも不要です。
このように、一般的なビジネスをはじめるのに必要な「自社商品・サービス」「店舗・オフィス」などを用意する必要がないため、開発コストを抑えてビジネスをはじめられます。
そのため、「新たなビジネスを立ち上げたいけど多くの予算や時間は割けない」といった企業におすすめのビジネスです。
ネットワーク効果が期待できる
ネットワーク効果とは、プラットフォームのユーザー数が増えれば増えるほど、全体の価値が高まる現象のことです。また、ユーザーの口コミや評価によって、新たなユーザーを獲得できるという意味として捉えられることもあります。
例えば、ECサイトをイメージしたとき、提供者が増えることで色んなジャンルの商品を提供できるようになれば、より幅広い利用者のニーズを満たせるため、結果として全体のユーザー数が増え、「どのジャンルの商品でも揃うECサイト」として価値が高まるでしょう。
さらに、プラットフォームは一定のユーザー数を超えると、大々的な集客を行わずとも、新規ユーザーを獲得しやすい傾向があります。これもまた、ネットワーク効果の恩恵を受けています。
このように、プラットフォームビジネスでユーザーにとって価値あるプラットフォームを構築できれば、ネットワーク効果による事業拡大が期待できる点もメリットです。
ビッグデータを活用できる
プラットフォームには、提供者や利用者をはじめとする多くのユーザーが集まります。
そのため、顧客に関するあらゆるデータが蓄積でき、「現在どのようなニーズがあるのか」「どのような行動をとるのか」「どのような属性のユーザーがいるのか」など、ビックデータの活用が可能です。ビッグデータの活用により、プラットフォームへよりよい機能やサービスを搭載できれば、効率的な事業拡大が可能です。
また、プラットフォームで収集したビッグデータを別のビジネスに持ち込むことで、確度の高いビジネスを始められるという点は非常に大きなメリットです。
プラットフォームビジネスのデメリット
プラットフォームビジネスのデメリットは2つあります。1つずつみていきましょう。
サービス内容によってはユーザーが全く集まらない
競合がすでに優位性を確立しているプラットフォームがある場合、似たようなサービス内容のプラットフォームを構築しても、ユーザーの獲得は難しいでしょう。
そのため、これからプラットフォームビジネスに参入するとなれば、独自の機能やサービスを提供したり、未だ競合が参入していない市場を狙ったりするなど、競合との差別化を図ることが大切です。
法規制に注意しなければならない
プラットフォームの種類にもよりますが、場合によっては法規制に注意する必要があります。例えば、フリマアプリを提供する場合、プラットフォーマーは利益を目的としてサービスを活用するユーザーに対して「古物商許可申請」の提出を求め、個人情報を収集しなければなりません。
もし古物商許可申請の提出を求めず、個人情報を収集しないままプラットフォームを運営してしまうと、違法行為にあたる可能性があります。
ほかにも、プラットフォームビジネスに関連する法規制には「独占禁止法」や「特定商取引法」などが挙げられます。プラットフォームビジネスを立ち上げる際は、「関連の法規制がないか」「どのように対策をとるか」など、法規制に配慮しましょう。
プラットフォームビジネスの運用経験がないと難易度が高い
プラットフォームビジネスは比較的に簡単に始められるビジネスモデルです。しかし、プラットフォームである以上、需要と供給のバランスをとりながら運営する必要があるため、運用経験がない方にとっては難易度が高いと感じるかもしれません。
クラウドソーシングなどのスキルシェア系のプラットフォームの場合、使いたいユーザーは沢山集まったが、案件を掲載してくれる企業が集まらず、ユーザーが徐々に離脱してしまう…といったケースはよくある話です。
プラットフォームビジネスを始める際は、経験者の力を借りながら進めるとよりスムーズな立ち上げができます。弊社も自社でプラットフォームビジネスを運営しておりますの、もし立ち上げサポートが必要な場合はぜひお声がけください。
【成功事例】プラットフォームビジネスの有名サービス3選
プラットフォームビジネスの成功事例として、有名なプラットフォームサービスを3つ紹介します。
Amazon|世界中で利用されるECサイト
出典:アマゾンジャパン合同会社「アマゾン」
Amazonは、世界中で利用されているECサイトで、その規模は世界最大級ともいえます。企業だけでなく個人が商品を出品するサービスも提供しているため、提供できる商品の幅が広く、多くのユーザーを獲得しています。
また、Amazonは動画配信サービス「Prime Video」や音楽配信サービス「Amazon Music」なども展開しはじめ、着々と新規ユーザーを獲得し続けている成功事例です。
Uber Eats|コロナの影響で利用拡大
出典:UberJapan株式会社「ウーバーイーツ」
Uber Eatsは、フードデリバリーサービスのひとつで、国内ではコロナウイルスの感染拡大をきっかけに利用が広がりました。
提供者と利用者の二者間をつなぐプラットフォームが多いなか、Uber Eatsは提供者である飲食店と料理を注文する利用者にくわえて、飲食店から利用者のもとへ届ける配達員の三者をつなぐ点が特徴です。
利用者は注文や配達状況の確認など、スマホ1つですべての操作を行え、その手軽さも多くのユーザーを獲得した成功要因となっています。
LINE|インフラの一部ともいえるSNS
出典:LINE株式会社「LINE」
LINEは、今ではインフラの一部といえるほどの利用者が存在するSNSです。サービス提供当初は「無料通話・メッセンジャーアプリ」としてスタートし、多くのユーザーの獲得に成功しました。
その後は、ゲーム・ニュース・音楽配信サービスなど、さまざまなサービスをLINEで提供し始めたことで、ユーザー数はさらに拡大したといいます。近年では、決済システム「LINE Pay」も展開し、幅広い分野でのビジネスを成功させています。
このように、LINEは関連するさまざまなサービスを1つのプラットフォームで提供することで、価値を高めたよい事例です。
まとめ
プラットフォームビジネスは、商品・サービスの「提供者」と「利用者」をつなぐプラットフォームを提供するビジネスモデルです。比較的少ない開発コストでの立ち上げが可能なうえ、市場規模が拡大傾向にあることから、参入する企業は増えつつあります。
しかし、プラットフォームビジネスといっても、種類や収益モデルは複数に分かれるため、ユーザーニーズと自社が構築したいプラットフォームを擦り合わせていくことが大切です。
競合にはない機能・サービスを提供し、自社ならではのプラットフォームでビジネスを成功へと導きましょう。