ノーコードとは、プログラミングやコーディングなどの専門知識不要で、アプリやシステムを開発できる手法のことです。注目が高まりつつあるノーコードですが、実際にどのようなことが実現できるのかを知らない方は少なくありません。
そこで、本記事ではノーコードについてメリット・デメリットをはじめ、開発事例やおすすめツールまで詳しく解説していきます。
ノーコードとは
ノーコードとは、ソースコードを記述することなく、アプリやシステムを開発できる手法のことです。ノーコード開発とも呼ばれ、ノーコード開発に特化したツールをノーコードツールといいます。
通常、アプリ・システム開発には、プログラミング言語を用いたソースコードの記述が必要ですが、ノーコードツールを利用すればドラッグ&ドロップといった直感的な操作のみでのアプリ・システム開発が可能です。
ノーコードでできること
ノーコードでできることとしては以下の内容が挙げられます。
- アプリ開発
- Webサイト制作
- 業務効率化・自動化
- PoCやMVP開発 など
上記のように、ノーコードではアプリ開発やWebサイト制作だけでなく、社内の業務効率化・自動化に役立てたり、新規事業立ち上げ時に欠かせないPoCやMVP開発にも活用できます。
出典:一般社団法人 NoCoders Japan協会「【最新】「ノーコード・カオスマップ」(2022年8月版)の公開について」
2022年には一般社団法人 NoCoders Japan協会から、ノーコード関連企業・サービスを一覧化した「ノーコード・カオスマップ」が公開されました。
アプリを例にとっても、ビジネスアプリ・モバイルアプリ・人材マッチングアプリなど、さまざまな種類の開発が可能となっています。カオスマップから分かるように、ノーコードの活用の幅は広がりつつあります。
ノーコードとローコードの違い
ローコードとは、必要最小限のノースコードを記述しながら、アプリやシステムを開発できる手法のことです。ノーコードはソースコードの記述がまったく必要ありませんが、ローコードは一部ソースコードの記述が必要となります。
そのため、ノーコードと比べてローコードは、プログラミングやコーディングといった専門知識が求められます。その反面、ノーコードよりも搭載機能や仕様のカスタマイズ性に優れている点がローコードの特徴です。
ノーコードに注目が集まっている理由
ノーコードに注目が集まっている主な理由としては、「IT人材が不足していること」と「PoCやMVP開発と相性がよいこと」の2点が挙げられます。それぞれの内容を詳しくみていきましょう。
IT人材が不足している
本来、アプリ・システム開発にはエンジニアやプログラマーといったIT人材が必要です。しかし、そもそも労働人口が減少しつつある日本では、IT人材が不足しており、社内でIT人材を確保しようとすると、多大なコストや時間がかかってしまいます。
そのため、非エンジニアでもアプリ・システム開発を行えるノーコードに注目が集まっています。ノーコードであればドラッグ&ドロップといった直感的な操作で開発を行えるため、既存社員を活用でき、IT人材の不足にも対応可能です。
PoCやMVP開発と相性がよい
新規事業立ち上げ時の失敗リスクを軽減できるとして、アイデアや技術の実現性を検証する「PoC」や、必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発する「MVP開発」などを実施する企業が増えてきました。
PoCやMVP開発は本格的な開発の前段階もしくは初期段階に行われるもので、どちらもニーズの変化や競合争いといった面から、スピード感が求められます。
ソースコードの記述が必要ないノーコードであれば、比較的短期間での開発が可能なため、PoCやMVP開発にノーコードを用いることが増えています。
このように、PoCやMVP開発とノーコードの相性はよく、PoCやMVP開発の需要が高まると同時にノーコードにも注目が集まっているのです。
ノーコードを利用する3つのメリット
ノーコードを利用するメリットは以下の3つです。
- 専門知識が必要ない
- 開発コストを抑えられる
- 短期間での開発が実現する
1つずつ詳しく解説します。
専門知識が必要ない
アプリ・システム開発に専門知識が必要ない点は、ノーコード最大のメリットです。ドラッグ&ドロップといった直感的な操作のみで開発を行えるため、社内にエンジニアやプログラマーがいなくても、既存の社員によるアプリ・システム開発が実現します。
ITスキルがほとんどない人材でも、約2週間ほどの学習期間があればノーコードツールを利用できるようになるといわれています。
開発コストを抑えられる
ノーコードであれば既存の社員による開発が可能で、専門知識を持ったエンジニアやプログラマーを社内に確保する必要がないため、人材確保や外注にかかるコストを抑えられます。
とくに専門知識を持ったエンジニアやプログラマーを確保もしくは外注する際のコストは、数百万円以上と高額になる傾向があります。そのため、ノーコードを利用して社内で開発できるとなれば、大幅なコスト削減が期待できるでしょう。
短期間での開発が実現する
本来アプリ・システム開発ではソースコードを記述しながらプログラミングを行い、ミスや仕様変更があれば、その都度ソースコードを書き直す作業が必要なため、長期間にわたる開発期間が必要です。
しかし、ノーコードであればソースコードを記述する必要がなく、あらかじめ準備されたパーツを組み合わせるといった作業のみで開発を行えるため、短期間での開発が実現します。
ミスや仕様変更があってもパーツを組み替えるのみで修正が完了するため、ソースコードを書き直すといった手間もかかりません。ツールの種類によっては最短1日での開発が可能です。
ノーコードを利用する2つのデメリット
ノーコードを利用するデメリットとしては、「カスタマイズ性が低い」「海外製品のものが多い」の2点が挙げられます。それぞれのデメリットについて1つずつみていきましょう。
カスタマイズ性が低い
ノーコードは、あらかじめ準備されたパーツを組み合わせるのみで開発できる点がメリットである反面、そもそも提供されていない機能は搭載できないというカスタマイズ性の低さがデメリットです。
提供されていない機能を搭載するとなれば、自らソースコードを記述しなければならないため、専門知識が必要となります。そのため、ノーコードは複雑な機能や仕組みのアプリ・システム開発には向いていません。ノーコードを活用する場合、事前に必要な要素を洗い出し、実装可能かどうかを判断する必要があります。
海外製品のものが多い
現在、ノーコードツールはさまざまな種類のものが提供されていますが、海外製品のものが多く、「ツール自体が日本語に対応していない」「日本語によるサポートが受けられない」といったデメリットがあります。
ノーコードツールを利用するにあたって学習するとしても、学習サイトやマニュアルが日本語に対応していないケースも少なくありません。翻訳しながら学習・利用するとなれば、時間や労力がかかり、社員の負担を増やしてしまう可能性も考えられます。
ノーコードツールを選ぶ場合は、日本製のツールでサポートが整っているものを選ぶと良いでしょう。
【国内事例】ノーコードで開発されたアプリ3選
ノーコードで開発されたアプリを国内事例に絞って3つ紹介します。
より多くの事例を確認したい方は以下の記事で15社紹介しているので、あわせて読んでいただければ幸いです。
kitene|Twitterを通じた人材募集サービス
出典:シースリーレーヴ株式会社「Kitene」
kiteneは、Twitterを通じて簡単に人材を募集できるサービスです。「Bubble」というノーコードツールを用いて、わずか約1か月で開発されました。利用する流れは以下のようにシンプルです。
- サービスサイトにTwitterアカウントでログイン
- 募集を作る
- 募集URLをTwitterに投稿
- 応募者のなかからよい人を採用
人材採用・専門知識のある人に何か聞きたいとき・イベント開催など、さまざまな目的で活用されています。Twitterアカウントがあれば誰でも利用でき、リリースから2023年8月現在まですべての機能が無料で提供されている点も魅力です。
LIBRIS|行きたい本屋・ブックカフェが見つかる検索サイト
出典:株式会社LIBRIS「LIBRIS」
LIBRISは、個人経営の小規模な本屋から有名なブックカフェなど、行きたい本屋・ブックカフェを探せる検索サイトです。2023年8月現在では、関東を中心に100店舗以上の本屋・ブックカフェが掲載されており、検索方法は以下のように多岐にわたります。
- 住所/エリア名から
- 地図/現在地周辺から
- カテゴリから など
また、LIBRISは本屋・ブックカフェの検索だけでなく、書籍の検索や購入なども行えるなど、機能が充実している点も特徴です。
ブラリノ|結婚式準備に役立つアプリ
出典:株式会社Relief Innovation「ブラリノ」
ブラリノは、結婚式準備に役立つアプリで、具体的には以下のような機能が搭載されています。
- Web招待状
- オンラインご祝儀
- 事前引き出物選択
- 写真共有 など
例えば、Web招待状機能では、あらかじめ用意された項目にメッセージや写真を追加するのみで完成するため、10分程度で作成できます。
このように、機能数が豊富なうえ、それぞれの機能も利便性が高いという魅力があります。リリースから2023年8月現在まで、すべての機能を無料で利用できる点も魅力です。
【無料】おすすめのノーコードツール5選
無料で利用できるおすすめのノーコードツールを5つ紹介します。
Webサイト制作に特化したツールを知りたいという方は、以下の記事をあわせてご確認ください。
Bubble|ユーザー数330万人を超える実績
出典:Bubble Group, Inc.「Bubble」
Bubbleは、全世界で330万人以上のユーザー数を誇るノーコードツールです。ドラッグ&ドロップといった直感的な操作のみで、Webアプリの開発が実現します。機能が豊富で、ノーコードツールのなかでも汎用性が高く、大抵のWebアプリであれば開発が可能です。
ただし、機能が充実している反面、初心者にとっては使いこなすまでに時間がかかる傾向にあり、日本語に対応していない点にも注意しなければなりません。
Adalo|モバイル向けのアプリ開発が得意
出典:Adalo, Inc.「Adalo」
Adaloは、モバイル向けのWebアプリやネイティブアプリの開発を得意とするノーコードツールです。直感的に操作できるUIが採用されており、使いながら活用方法を理解していけるため、IT初心者でも簡単に利用できます。
提供されているテンプレートにはデザイン性が高いものも多く、1からデザインを考える必要がありません。ただし、カスタマイズ性が低いため、複雑な機能やデザインを採用できない点に注意が必要です。
STUDIO|コードやテンプレートに縛られないWebサイト制作
出典:STUDIO株式会社「STUDIO | Web制作を、ノーコードで。」
STUDIOは、Webサイト制作向けのノーコードツールです。コードやテンプレートに縛られず、誰でも自由自在にデザインできるうえ、制作したWebサイトはたった1クリックで世界に公開できます。
国産のノーコードツールで、日本語完全対応のため、利用する際やサポートを受ける際の不安が少ない点も魅力です。ただし、Webサイト制作向けの機能がメインのため、アプリ開発やデータベース構築などには向いていません。
Webflow|Webサイト制作向けで汎用性の高さが強み
出典:Webflow, Inc.「Webflow」
Webflowは、Webサイト制作向けのノーコードツールです。フロントエンドだけでなく、バックエンドやデータベースの構築にも一部対応しているため、他のノーコードツールに比べて汎用性が高いという強みがあります。
また、Webflowで作成したWebサイトのソースコードをエクスポートできるため、大枠をWebflowで作成後、ソースコードを書き加えてカスタマイズするといったことも可能です。
ただし、日本語に対応していない点や、ソースコードを書き加えてカスタマイズするには専門知識が必要となる点に注意しなければなりません。
Zapier|複数のサービスを連携させ業務効率化
出典:Zapier Inc.「Zapier」
Zapierは、複数のサービスを連携させることで、業務を効率化・自動化できるノーコードツールです。連携できるサービスは2023年8月現在で6,400種類を超えており、代表的なサービスには以下が挙げられます。
- Slack
- HubSpot
- Salesforce など
このように、連携できるサービスの種類が豊富で、一般的に活用されているサービスであればそのほとんどが連携できます。そのため、既に導入しているサービスが複数ある場合でも活用しやすい点が魅力です。
まとめ
ノーコードは、プログラミングやコーディングといった専門知識がなくても、アプリやシステムを構築できる開発手法です。IT人材の不足を補えるとして注目が集まっています。無料で利用できるノーコードツールも数多く提供されているため、非エンジニアでも低コストで簡単に開発を行えます。
ただし、日本語に対応していないことやそれぞれのツールにも得意分野があるため、目的に合ったツールを導入し、ノーコード開発を進めていきましょう。
もしノーコードでの開発に不安があるという方は、ノーコード受託開発会社にお願いするのも良いでしょう。以下の記事で15社紹介しているのであわせて読んでみてください。