MVP開発とは?アジャイル開発・PoCとの違いやメリット

MVP開発とは

MVP開発とは、必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発することです。

本記事では、MVP開発の定義や関連用語との違い、実施する理由やメリットまで分かりやすく解説します。

目次

MVP開発とは

MVP開発の説明

そもそもMVPは「Minimum Viable Product」の略で、必要最小限の機能を搭載したプロダクトを意味します。例えば、携帯電話のMVPには、通話機能のみが搭載されているといった状態です。

MVP開発は本格的なプロジェクトの始動前に実施され、本格的なプロジェクトのコスト削減や効率化などを目的としています。開発したMVPは、顧客の反応をみたりフィードバックを得たりするために活用されます。

リーンスタートアップで重要視されるMVP開発

リーンスタートアップの説明

そもそもリーンスタートアップとは、コストをかけずに短期間で商品・サービスを開発するためのマネジメント手法を指します。そして、このリーンスタートアップのプロセスのひとつが、MVP開発です。

どれだけ魅力的なアイデアであっても、実際に商品化してみると需要がなかったり開発にコストがかかりすぎて黒字化が難しかったりするケースは少なくありません。この場合、プロジェクトにかかったコストや時間が無駄になってしまいます。

しかし、本格的なプロジェクト始動前にMVP開発を行うことで、事前に顧客の反応を検証することが可能です。そのため、本格的なプロジェクトを始動させた際の失敗リスクを抑えつつ、ビジネスとしての成功確率を高めることにもつながります。

実際、FacebookやX(旧Twitter)もMVP開発を行い、顧客の反応やフィードバックをもとに改善を繰り返したことで成功したといわれています。

このように、ニーズの変化が目まぐるしい現代では、MVP開発を用いたリーンスタートアップが欠かせません

MVP開発と関連用語の違い

MVP開発とよく混同される言葉に「アジャイル開発」と「PoC」が挙げられます。それぞれ共通する部分もありますが、厳密には異なる意味を持ちます。MVP開発とそれぞれの用語の違いについて1つずつみていきましょう。

アジャイル開発との違い

アジャイル開発の説明

アジャイル開発とは、必要な機能を細分化し、優先順位の高いものから実装・テストを繰り返し行う開発手法です。短期間で開発を行う点がMVP開発との共通点です。

ただし、アジャイル開発では実装・テストする機能があらかじめ明確になっている反面、MVP開発では必要最小限の機能を搭載したプロダクトを活用し、顧客からのフィードバックをもとに検証・改善を繰り返します。

短期間で効率的に開発を行う点でMVP開発とアジャイル開発は相性がよいことから、MVP開発の開発手法としてアジャイル開発が採用されることもあります。

PoCとの違い

PoCは「Proof of Concept」の略で、新しいアイデアや技術が実現可能かを検証することです。日本語では「概念実証」と呼ばれます。

MVP開発とPoCのどちらも新規事業の立ち上げ時によく出てくることから、混同して認識されることが多い傾向にあります。

2つの明確な違いは検証する対象です。PoCの検証対象は「アイデア」ですが、MVP開発では「具体的なプロダクト」を検証対象としています。

MVPはプロダクトの初期バージョンともいえますが、PoCで検証するのはあくまでもアイデアであるため、プロダクトの初期バージョンではありません。

また、アイデアが実現可能かを検証するためにプロダクトが必要となる場合、PoCのプロセスの一部にMVP開発が組み込まれるケースもあります。

MVP開発を行う理由・メリット

MVP開発を行う理由とメリットには以下の3つが挙げられます。

  • 開発コスト削減につながる
  • 方向性を定めやすくなる
  • 失敗リスクを最小限に抑えられる

それぞれの内容を詳しくみていきましょう。

開発コスト削減につながる

MVP開発を行うことで、本格的な開発に必要な機能の見極めが可能となります。そのため、無駄な機能を排除することによる開発コスト削減が実現します。

「はじめから多くの機能を搭載して充実度の高いサービスを開発したい」と考えてしまいがちですが、実際に運用を始めてみると一部の機能がまったく利用されないといったケースも珍しくありません。

本格的な開発前にMVPを運用してみて、顧客の反応やフィードバックを検証できれば、事前に本当に必要な機能と不要な機能の見極めが可能です。搭載する機能を絞り込めれば、開発コストを最小限に抑えられます。

いち早く市場に出せる

MVP開発では、必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発するため、本格的な開発に比べて短期間での開発が実現します。そのため、いち早く市場へ出すことが可能です。

ニーズの変化が目まぐるしい現代では、新たな商品・サービスも次々に登場します。「多機能で充実したサービスを」と開発に時間をかけていると、競合他社が似たようなサービスを先にリリースする可能性も考えられます。

競合の少ない市場で他社に先を越されてしまうと、先にサービスをリリースした他社の市場優位性が確立され、利益につながりにくくなるケースも少なくありません。

そのため、MVP開発によって、いち早く自社の商品・サービスを市場へ出すことが大切です。

失敗リスクを最小限に抑えられる

MVP開発を行い、本格的な開発前に「需要がない」「費用対効果が十分でない」などと判断できれば、いち早くプロジェクトを中止するといった意思決定ができ、損失を最小限に抑えることが可能です。

MVP開発を行わずに本格的な開発を進めた場合、運用後にニーズに合わないとなると、機能の選別や方向性の転換など、大規模な再開発が必要になる可能性があります。

再開発を行っても必ずしも成功するとは限らないため、時間をかけて失敗すると、そのぶん損失も大きくなるでしょう。

MVP開発で顧客の反応を見ることができれば、「ニーズに合っているか」「どのくらいの費用対効果が期待できるか」などを事前に判断できるため、失敗リスクを最小限に抑えられます。

MVP開発を行う5種類の手法

MVP開発には以下5つの手法があります。

  • コンシェルジュ
  • オズの魔法使い
  • スモークテスト
  • モックアップ
  • ランディングページ(LP)

それぞれがどのような開発手法なのか、具体的にみていきましょう。

コンシェルジュ

コンシェルジュは、提供する予定の商品・サービスの実際の動きを、手作業かつマニュアルに沿って操作する手法です。

例えば、翻訳サービスであれば、コンピューターが翻訳するのではなく、代わりに人間が翻訳を行います。

すべての動きを手作業で行うため、人的リソースがかかりますが、手作業で商品・サービスを提供することから顧客の反応を見やすく、意見も吸い上げやすい点がメリットです。

オズの魔法使い

オズの魔法使いは、顧客が見える部分は制作し、顧客の見えない部分は手作業で行う手法です。

例えば、旅行サイト上で宿泊施設への予約が入った際、宿泊施設へ電話やメールでの実際の予約は手作業で行います。

開発を行うのは商品・サービスの一部であるため、開発コストを抑えられる点がメリットのひとつです。手作業で対応する部分もあるため、顧客の反応を見やすいというメリットもあります。

スモークテスト

スモークテストは、提供する予定の商品・サービスに対して、顧客が興味関心を持つかどうかのみを調査する手法です。

スモークテストといっても、商品・サービスを紹介する動画を見てもらう「デモ動画」と、リリース前に購入や登録を募る「プレオーダー」の2つの種類に分けられます。

想定していたニーズが本当に合っているのかやズレていないかを確認できる点がメリットです。実際にプロダクトを開発するわけでないため、スピーディーな実施が実現するうえ、コストを最小限に抑えられます。

モックアップ

モックアップは「模型」を意味し、商品・サービスの外観のみを開発する手法です。外観を構築するため、顧客から見ればほとんど完成形のように見えますが、基本的に動作はしません。

デザインのトンマナを確認したりイメージを共有したりするのに活用されるケースと、顧客の情報の探しやすさを向上させるIA設計の確認に活用されるケースの2つがあります。

ランディングページ(LP)

ランディングページ(LP)は、商品・サービスを紹介するページを制作し、購入や登録を促す手法です。商品・サービスの特徴やメリットを分かりやすくまとめ、顧客は試作品の購入やメルマガ登録を行います。

試作品の購入やメルマガ登録の数によってニーズの有無や大小を測ることができ、LPに問い合わせフォームやコメント欄を設置すれば、顧客から直接的にフィードバックを得ることも可能です。

具体的なプロダクトを開発せずともニーズを調査でき、開発コストを抑えられるというメリットがあります。

MVP開発にはノーコード

ノーコードツールは、専門知識不要で、低コストかつ短期間での開発が実現するとして注目が高まりつつあります。Webサイト制作やアプリ開発によく用いられるノーコードツールですが、実はMVP開発にもノーコードツールが効果的です。

ノーコードツールは専門知識不要で開発できる反面、1からコーディングを行うスクラッチ開発に比べるとカスタマイズ性は低い傾向にあります。

しかし、ノーコードツールで本格的な開発がまったくできないというわけではなく、とくにMVP開発では搭載する機能が少ないため、ノーコードツールでも十分対応可能です。実際、ノーコードツールを活用して1週間で開発・リリースされたアプリもあります。

ノーコードツールを活用すれば、自社でMVP開発を行うことも可能なため、外注費も発生しません。

「自社にIT人材が確保できていない」「MVP開発に割けるコストや時間が少ない」といった場合は、ノーコードツールを用いたMVP開発を検討してみてください。

まとめ

必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発するのがMVP開発です。MVP開発を行うことで、本格的なプロジェクトの開発にかかるコストや期間、工程の削減につながります。

MVP開発といっても具体的な手法は7種類に分けられるため、自社が開発したいプロダクトに合わせて最適な開発手法を見極めましょう。

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