新たなアイデアをサービスとして形にする際、「実現可能性はあるのか」「どのような効果につながるのか」などを検証するためにPoCを実施する企業が増えてきました。
しかし、PoCの計画を立てるにあたって、「何から始めればよいか分からない」「計画書にはどんな項目があるの?」と悩んでいませんか?本記事ではPoCの計画書に記載すべき項目について、計画書サンプルと合わせて詳しく紹介します。
PoC計画書に必要な7つの項目
PoC計画書に記載すべき7つの項目を以下の表にまとめました。
それぞれの項目についてさらに詳しくみていきましょう。
①目的・ゴール
PoCの計画を立てる際には、まずPoC実施の目的・ゴールを設定しましょう。「なぜPoCを実施するのか」「PoCによってどのようなデータを得たいのか」などを具体化します。
例えば、「マッチングサイトの開発」という最終的な目標に向けてPoCを実施する場合、「市場規模はどの程度か」「ターゲット層はどのようなユーザーか」などのデータを得る必要があります。
もし上記のPoCで「十分な市場規模はあるものの予測していたターゲット層とは違うユーザー層の利用が活発だった」と分かれば、より需要の高いターゲット層に向けた本開発を行うことが可能です。
PoCで得られた結果は、あくまでも「本開発を進めるか否か」「本開発の方向性」などを決める判断材料となります。目的・ゴールが定まっていないと、PoCを実施すること自体が目的化してしまい、検証結果が何の役にも立たないといった問題につながりかねません。
PoCは複数回実施するケースも多いため、途中で「何のために行っているのかが分からない」と目的を見失わないよう、PoC実施の目的・ゴールは必ず明確にしておきましょう。
②スコープ
スコープとは、日本語で「範囲」「視野」といった意味を持ち、PoCにおいては「検証する範囲」を指します。
例えば、「マッチングサイトの開発」を最終的な目標にしている場合でも、マッチングサイトという新しいアイデアそのものの実現可能性を検証したいのか、マッチングサイトに搭載する機能の見極めを行いたいのかによって検証する範囲(=スコープ)は異なるでしょう。
最終的な目標を達成するにはさまざまな検証を行い多角的な分析が必要ですが、一度にすべての項目を検証しようとしても時間やコストがかかりすぎたり、本当に必要なデータを見失ったりする可能性があります。
そのため、「まずはメイン機能の需要を確認する」というように、設定した目的・ゴールを達成するために必要な最小限のスコープを検討しましょう。
③検証内容
具体的にどのような検証をするのか、検証内容を具体的に策定していきましょう。検証内容の大枠としては以下の3つが挙げられます。
- 技術的に実現可能か
- ユーザー需要があるのか
- 事業性が期待できるか
例えば、「事業性が期待できるか」を検証したい場合、PoCにかかったコストと検証結果から期待できる効果を照らし合わせることで費用対効果を分析できます。
新たな商品・サービス開発にPoCを実施する場合は、どのようなMVPを開発すべきかどうかも検証内容に含めましょう。
MVP開発とは、必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発することです。携帯電話でいうと通話機能のみが搭載されたプロダクトがMVPにあたります。
どのようなMVPを開発するかによって、準備すべき体制や予算が変動するため、検証内容を検討する段階で明確にしておくと、後々の項目を円滑に決めやすくなるでしょう。
④実施環境
PoCを実施するのにどのような環境が必要かを検討していきます。具体的には、PoC実施時に必要なシステム・データ・機能などが挙げられます。
PoCの実施環境はできる限り本番の環境に近づけることが大切です。本番の環境とかけ離れた環境でPoCを実施しても、信頼性の高いデータは得られません。
例えば、顧客管理システムの導入を考えていて、導入効果を検証するためにPoCを実施する場合、マーケティング部門や営業部門での活用が予測されます。
しかし、「PoCはあくまでも試験的なものだから」とまったく関係のない部門で試験導入してしまうと、現場で導入した際に期待できる効果の予測は正確ではありません。
そのため、マーケティング部門や営業部門での活用が予測されるのであれば、PoCも同部門の一部のチームで試験導入してみるというように、本番に近い環境を見極めましょう。
⑤体制・役割
PoC実施に必要な体制・役割を明確にすることも大切です。PoC実施にもコストが発生します。コストを無駄にしないためにも、最適なメンバー・チームでPoCを実施しなければなりません。
例えば、マッチングサイト開発のPoCを実施する場合、マーケター・エンジニア・デザイナーなどの必要な人材を洗い出します。
ここで本来必要な人材が社内にいるにもかかわらずPoCのメンバーから漏れていると、本当は実現できるサービスであっても、「実現可能性が低い」という結果になるなど、誤った検証結果が出る可能性があります。
関連部門も合わせてどのような体制・役割が最適かを検討しましょう。
⑥スケジュール
PoC実施には、実施までの「準備プロセス」と検証から評価までの「実証プロセス」があります。プロセスごとにどのようなスケジュールで進めるかを検討しましょう。
例えば、顧客管理システム導入を検討している場合の準備プロセスには「ベンダーの選定」「契約」「システム構築」などが挙げられ、実証プロセスには「試験導入」「効果検証」などが挙げられます。
「ベンダーの選定は○月○日まで」というように、できる限り数値を用いて具体的に決めることが大切です。数値で示すことで、計画に遅れが生じているといったPoCの進捗状況を判断しやすく、円滑なPoCの実施につながります。
⑦運営・管理方法
PoCは、一度始めると自動的に検証が完了するわけではありません。そのため、PoCの進捗状況の確認や体制づくりなど、運営・管理を行う必要があります。
社内で情報共有する際にはどのコミュニケーションツールを活用するのか、情報漏えいを防ぐためにはどのような管理方法が最適かなど、運営・管理方法について明確にしておきましょう。
PoC計画書サンプル
PoC計画書のサンプルを紹介します。ここでは、新規事業としてマッチングサイトを開発する場合のPoCの計画書を想定しています。
項目 | 概要 |
目的・ゴール | 〈検証する目的〉 マッチングサイトの実現可能性を知りたい 〈目標達成の基準〉 ・MVP開発が○○円以内に収まるか ・期待できる市場規模が○○円以上あるか ・ユーザーの継続利用率が○%以上になるか 等 〈目標達成時の動き〉 マッチングサイトの本開発に移行する |
スコープ | 〈検証の対象となる範囲〉 ・現在自社が持つ技術 →どの技術がマッチングサイト開発に活用できるか 等 |
検証内容 | 〈具体的な検証内容〉 ・マッチングサイトの開発が技術的に実現可能かどうかを検証する 等 〈MVP開発〉 ・MVPには○○機能と○○機能を搭載する ・デザインは○○テンプレートを活用する 等 〈検証手順〉 ・実際のターゲット層に近いユーザーを社内で検討 ・社内で試験導入後、需要が期待できると判断できた場合のみユーザーテストを実施 等 |
実施環境 | 〈必要なシステム・データ〉 ・マルチデバイスでの利用が想定されるため、PoCでもマルチデバイス対応を行う 等 |
体制・役割 | 〈必要な人的リソース・チーム〉 ・マーケター ・エンジニア ・デザイナー 等 →○○部門の××(担当者名)、○○部門の××、~~~の計○名のチームでPoCを実施する |
スケジュール | 開発手法の選定:○月○日まで システム要件の設定:○月○日まで MVP開発:○月○日まで 実施環境の整備:○月○日まで 実証:○月○日まで 評価・改善:○月○日まで 等 |
運営・管理方法 | 〈情報共有ルール〉 コミュニケーションツール○○にて、専用グループを作成 〈情報管理ルール〉 原則クラウドサービスにて情報を管理し、関係者のみに閲覧・編集権限を付与 |
より詳しいPoCの実施、マッチングサイトの構築を検討したいという方はお問い合わせください。
PoCを実施する重要性
どれだけ優れたアイデアであっても、そのアイデアを事業として形にしたとき、必ず成功するとは限りません。開発途中で技術的に実現不可能ということに気づく可能性もあります。このような場合、開発にかかったコストや時間は無駄になってしまいます。
PoCを実施することで、実現可能性や期待効果を検証できれば、本開発に進むべきかどうかを判断することが可能です。
また、IT技術の活用が注目されている昨今では、見通しが立ちにくいサービス開発を行うことが増加すると考えられています。そのため、PoCのような検証によって実現可能性を検証し、失敗リスクを軽減させることが大切です。
PoCと相性がよいノーコード開発
PoCやMVP開発と相性がよい開発手法に「ノーコード開発」があります。ノーコード開発とは、既存機能をドラッグ&ドロップといった直感的な操作を組み合わせるだけで、サービス開発が実現するというものです。
プログラミング言語やコーディングなどの専門知識が必要ないため、IT人材を確保する必要がなく、コストを抑えながらよりスピーディーな開発が可能です。
「PoCにコストがかかりすぎて本開発に十分なコストを割けない」「PoCに時間がかかり似たようなサービスが先に他社から出た」などのリスクを回避するには、低コストかつ短期間での開発が求められます。
このような背景もあり、ノーコード開発は本格的なアプリ開発やWebサイト開発に活用されることはもちろん、低コストかつ短期間での開発が実現することから、PoCやMVP開発に活用される場面も増えています。
まとめ
効果的なPoCを実施するには、具体的な計画の策定が重要です。計画が不明確な場合、「PoCで期待される効果が得られない」「PoCをスムーズに進められない」などの問題につながりかねません。今回紹介した計画書に必要な7項目を参考に、PoCの計画書を作成してみてください。