PoCの成功事例7選!成功させる2つのコツ

PoCの成功事例

PoCとは新たなアイデアや技術が実現可能かを検証することです。新規事業の立ち上げや社内へのシステム導入に向けて、PoCを実施する企業が増えています。

本記事では、「PoCを実施するにあたってどんな事例があるかを知りたい」という方に向けて、7つの成功事例と事例から学ぶ成功のコツ2つを紹介します。

目次

PoCの成功事例7選

PoCの成功事例7つを1つずつ詳しくみていきましょう。

スマート農業実証プロジェクト|農林水産技術会議

農林水産技術会議が実施する「スマート農業実証プロジェクト」は、AIやロボットなどの先端技術を活用したスマート農業の効果を実証し、スマート農業の実装を加速させるための事業です。令和元年度に開始され、これまで全国217地区で実証が行われてきました。

実際にPoCが実施された宮城県加美町の農業法人いかずちでは、ドローンを用いた防除作業によって、労働時間を81%削減することに成功しています。

すでに多くの地区で効果を実証することに成功していますが、令和元年度より現在までPoCはさまざまな地区で継続的に実施されています。

このように、スマート農業によってどのような効果が得られるかを実証し続けることで、本格的にスマート農業を実装する農業法人が増加しているPoCの成功事例です。

出典:農林水産技術会議「「スマート農業実証プロジェクト」について

出典:農林水産技術会議「【初年度実証成果】(農)いかずち(宮城県加美町)

人の流れを可視化するPoC|富士通

富士通では、観光客数が年々増加している北海道で、より効果的な観光施策や事業立案をするため、人の流れをリアルタイムで計測・可視化するPoCを実施しました。

具体的には、各観光施設や商店街、駅構内などの観光客が集まる場所に同社製のWi-Fiパケットセンサーを設置し、観光客が所有する通信機器の固有IDを収集するというものです。収集するデータに個人情報は含まれません。

このPoCによって各時間帯やエリア別の人の流れを可視化することが可能となり、各地域の観光施策や各種事業の効果検証などに活用されています。

出典:富士通株式会社「北海道広域で観光客などの人の流れをIoTで可視化する実証を開始

無人店舗のPoC|東芝テック

東芝テックでは、東芝テックグループの従業員を対象に、無人店舗ソリューションの商品化に向けたPoCを実施しました。少子高齢化や人口減少に伴う人材不足への対策や、利用者の利便性向上を実現することが目的です。

このPoCでは、スマホ・タブレットを利用したセルフレジ、各種センサー・カメラを利用したフリクションレス体験、AIを活用した不正検知など、検証内容は多岐にわたります。

例えば、各種センサー・カメラを利用したフリクションレス体験は、入店時に従業員証をかざすだけで手に取った商品と従業員番号を紐づけし、退店時にあらかじめ登録した決済方法で決済が完了するというものです。

上記はあくまでもPoC実施時のイメージですが、PoCの結果をもとに改善しながら実現を目指しています。

出典:東芝テック株式会社「スマートフォン・タブレット・各種センサー技術を活用したマイクロマーケット向け無人店舗の実証実験

勤務シフト自動生成のPoC|KDDIエボルバ・KDDI・日立製作所

KDDIエボルバ・KDDI・日立製作所が合同で実施したPoCは、量子コンピューティング関連技術を活用して勤務シフトの自動生成を行うというものでした。

勤務シフトは、各スタッフの契約条件・希望・スキル・時間帯などの複雑な条件を満たして作成しなければならず、約100名ものスタッフが在籍する勤務シフトの作成は、熟練の管理者でも11時間以上の時間が必要だったといいます。

しかし、PoCでは勤務シフトを約5時間で自動生成することに成功したうえ、作成スタッフによる偏りが生じない勤務シフト作成が可能となりました。そのため、3社は勤務シフト自動生成の実導入を目指しています。

出典:株式会社日立製作所「量子関連技術で勤務シフト作成時間を5割超短縮、業務実証に成功

自動運転車へのサイバー攻撃を防御するPoC|Creator’s NEXT

Creator’s NEXTは、自動運転車へのサイバー攻撃を防御するためのAI特許技術に関するPoCを実施しました。

自動運転技術が普及すると同時に課題視されているのが、自動運転車へのサイバー攻撃です。例えば、「停止」の道路標識を「時速60km制限」に誤認識させるといったサイバー攻撃が実在しています。

そこで、Creator’s NEXTはこのような課題を解決するAI技術を開発し、特許を取得しました。AI特許技術のPoCでは、精度と頑健性がGoogleの実証結果を上回る数値が得られ、世界一のセキュリティー防御技術と認められました。

今後Creator’s NEXTは、サイバー攻撃の防御に特化した集積回路を開発し、自動車メーカーへ販売することを目指す予定です。

出典:株式会社 PR TIMES「クリエイターズネクストがAIの特許技術によるPoCで自動運転車のセキュリティー防御技術世界一を達成 | 株式会社Creator’s NEXTのプレスリリース

働く環境によるストレスや生産性の変化を検証するPoC|Acall・鹿島建設

ACALLは鹿島建設と合同で、働く環境がストレスの増減や生産性の変化に影響するのかというPoCを実施しました。

具体的には、緑といった自然の要素が取り込まれたデザインに、光や音などの能動的な環境制御を融合させた室内空間「そと部屋」をオフィスの一部に設置するというものです。

PoCでは、自席での休憩よりそと部屋でとった休憩のほうが、リラックス効果を表す副交感神経活動が大きいという結果が得られました。また、そと部屋での休憩後に行った創造的作業において、知的生産性の向上効果が大きいということも分かっています。

その後、そと部屋では第2期の実証実験が実施されており、設計提案内容に関するエビデンスが蓄積されています。

出典:鹿島建設株式会社「五感に訴えるウェルネス空間「そと部屋®」を開発| プレスリリース

防災チャットボット「SOCDA」のPoC|防災科研・ウェザーニュース・NICT

防災科研・ウェザーニュース・NICTがLINE株式会社の協力を得て行ったPoCは、災害発生時の避難や災害対応機関の意思決定を支援する防災チャットボット「SOCDA」の研究開発時に行われました。

具体的には、災害発生時に市職員の調査結果や市民の安否情報・避難場所をSOCDAを通じてSNS上の災害情報分析システムに伝えるというものです。SOCDAの開発は5か年計画とされ、今後も技術開発と実証実験を繰り返し実施するとしています。

出典:国家レジリエンス研究推進センター「伊丹市水防図上訓練で「防災チャットボット『SOCDA』」の実証実験を実施|お知らせ

PoCを成功させる2つのコツ

成功事例から分かったPoCを成功させるコツは以下の2つです。

  • 検証は複数回繰り返す
  • PoCそのものを目的化させない

それぞれのコツについて詳しくみていきましょう。

検証は複数回繰り返す

成功しているPoCの共通点は、検証を複数回実施している点です。

PoCの失敗例

1回のPoCに検証内容を詰め込み過ぎると、得られるデータが多すぎるゆえに、どのデータで何を判断すればよいか分からなくなるケースがあります。また、検証の規模が大きくなるほど、PoCにかかるコストもかさみ、もし失敗に終わった際の損失が増大してしまいます。

PoCの良い例

そのため、PoCを実施する際はどのようなデータを得たいのかを明確にし、小規模で複数回繰り返しながら必要な情報を収集していくことが大切です。PoCで課題点が見つかることもあります。小規模な検証であれば解決すべき課題点の優先順位もつけやすいでしょう。

PoCそのものを目的化させない

PoCに失敗する原因として、PoCの実施そのものが目的になっているケースがあります。

PoCそのものが目的化すると、PoCを実施したことに満足してしまい、次のアクションにつながらなかったり、何のためにPoCを実施していたかが分からなくなったりする可能性があります。

そのため、PoCを実施する際は、事前にPoCの先にある目的を明確にしなければなりません。

PoCを成功させている企業の多くが、「ビジネスとして成立するかを確認する」「どのくらいの効果が得られるかを確認する」など、次のアクションを前提にPoCを実施しています。あくまでもPoCは目的を達成するための手段として認識することが大切です。

新規事業立ち上げにはPoCが重要

新規事業を立ち上げるには莫大なリソースを割く必要があります。しかし、どれだけ魅力的なアイデアであっても実現不可能だったりビジネスとして成立しなかったりすることは珍しくありません。

そこで、新規事業を立ち上げる際のPoCの重要性が高まりつつあります。PoCは新しいアイデアや技術が実現可能かを検証するものです。当然PoCを実施するにもコストを要しますが、新規事業の立ち上げにかかるコストに比べると低コストで実施できます。

PoCの正しい進め方

PoCで「実現不可能」「ビジネスとして成立しない」と判断できれば、損失を最小限に抑えることが可能です。

また、PoCは新規事業立ち上げの効率化にも役立ちます。

例えば、マッチングサイトに搭載する機能に関するPoCを実施した場合、本格的な開発前に本当に必要な機能を厳選することが可能です。そのため、本格的な開発を進める際のリソースを削減したり開発期間を短縮したりすることが実現できます。

このように、新規事業の立ち上げにPoCの実施は欠かせないものとなりつつあります。新規事業を成功させるため、損失リスクを最小限に抑えるためにPoCの実施を検討してみてください。

まとめ

新規事業の立ち上げやシステム導入に向けてPoCを実施する企業が増え、すでに多くの成功事例があります。PoCの実施を検討している方は、今回紹介した成功事例を参考に効果的なPoCを実施してください。

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