本開発のコスト削減や効率化を図るために注目を高めているのが、MVP開発やPoCの実施です。
しかし、「MVP開発とPoCの違いがよく分からない」「どちらを実施したほうが効果的なの?」といった悩みを抱えていませんか?
本記事ではそんな方に向けて、MVP開発とPoCの違いやその他関連用語との違いまで詳しく解説します。
MVP開発とは
そもそもMVPは「Minimum Viable Product」の略で、必要最小限の機能を搭載したプロダクトのことです。つまり、MVP開発は「必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発すること」を意味します。
例えば、携帯電話のMVPには、通話機能のみが搭載されているというイメージです。
MVP開発は、「想定するニーズが本当に求められているものか」「製品・サービスの課題は何なのか」などを判断することを目的として実施されます。
社内では「顧客ニーズを満たす魅力的な製品・サービス」と想定していても、実際に商品化してみると想定していたような効果が得られないケースは珍しくありません。
しかし、本開発を開始する前にMVP開発を行うことで、実際の顧客の反応やフィードバックを得られます。「市場へ出したときに想定していた価値を提供できる」と分かったうえで本開発を進められる点が、MVP開発を行うメリットです。
MVP開発の事例|Airbnb
民泊サービスとして有名なAirbnbは、MVP開発によって成功を収めた事例のひとつです。
現在は、宿泊施設の検索・予約・支払・評価などの充実した機能が搭載されていますが、サービスがリリースされた当初は、宿泊可能な場所が掲載されているだけのWebサイトでした。
ただ、このWebサイトの反響があまりに大きかったことから、「Webサイトから予約できるようになれば便利になるのでは?」というように新たな機能が徐々に追加されていきました。
このように、MVP開発は顧客の反応やフィードバックをもとに、新しい機能を追加したり改善したりすることで、顧客が本当に求めているニーズに応えられるというメリットがあります。
PoCとは
PoCは「Proof of Concept」の略で、新しいアイデアが実現可能かどうかを検証することです。日本語では「概念実証」と訳されます。
コスト面でアイデアが実現可能かどうかや、ビジネスとして成立するかどうかなどを判断するために活用されるのがPoCです。
どれだけ魅力的なアイデアであっても、アイデアの実現可能性を検証しないまま本開発を進めると、失敗した際の損失が大きくなってしまいます。
しかし、本開発前にPoCを行うことで、実現可能性が高いと判断できた状態で本開発を進められるため、本開発の失敗リスクを軽減することが可能です。
PoCの事例|農林水産技術会議
農林水産技術会議が実施している「スマート農業実証プロジェクト」は、スマート農業によって農作業の効率化を実証したPoCの事例です。
もともと、ロボット・AI・IoTなどの先端技術を活用することで、農作業を効率化できるのではないかというアイデアの実現可能性を検証するためにPoCが開始されました。
すでに全国217地区以上で実施されており、実際にドローンを用いた防除作業によって作業時間を約8割削減するなど、先端技術による農作業の効率化を実証しています。
このように、スマート農業実証プロジェクトは、PoCでアイデアの実証に成功したことで、スマート農業の社会実装が加速することにつながった成功事例です。
MVP開発とPoCの違い
MVP開発もPoCも、本開発前に実施されるという点では共通していますが、目的・検証対象・得られる効果の3点に違いがあります。3つの違いを表にまとめました。
PoCでは、アイデアの実現可能性を検証するために、場合によっては試作品といった具体的なプロダクトが必要です。そのため、PoCのプロセスの一部にMVP開発が含まれるケースがあります。
MVP開発と関連用語との違い
PoC以外にMVP開発と混同されやすい用語として、「アジャイル開発」「PMF」「リーンスタートアップ」の3つが挙げられます。それぞれの違いについて詳しくみていきましょう。
MVP開発とアジャイル開発の違い
アジャイル開発とは、製品・サービスに必要となる機能を細分化し、優先順位の高い順に実装とテストを繰り返す開発手法です。
一つひとつの工程をクリアしながら開発を進めるため、仕様変更や不具合が発生した際の戻り工数が少なく、開発にかかる時間を短縮するのに役立ちます。
一方のMVP開発は、あくまでも必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発することを意味し、顧客の反応やフィードバックをもとに製品・サービスの改善を行います。
MVP開発もアジャイル開発も短期間で開発する点では共通していますが、顧客の反応やフィードバックをもとに製品・サービスの改善を行う点がMVP開発ならではの特徴です。
MVP開発とPMFの違い
PMFは「Product Market Fit」の略で、提供している製品・サービスが特定の市場に適合している状態のことです。提供している製品・サービスが顧客に受け入れられ、顧客を満足させることに成功している状態とも言い換えることができます。
そして、このPMFの達成を目指す手段として有効なのが、MVP開発です。MVPの改善を繰り返すことで、顧客が本当に求めている製品・サービスを構築し、PMFを達成するといった流れになります。
つまり、「MVP開発=PMFを達成するための手段」という認識が適切です。
MVP開発とリーンスタートアップの違い
そもそもリーンスタートアップは、「痩せた・少ない・限られた」といった意味を持つ「リーン(lean)」と、「スタートアップ(start-up)」を組み合わせた言葉です。
無駄を省きながら効率的な開発を行い、新規事業を実現させること、またはそのマネジメント手法を意味します。
新規事業の立ち上げでは事業の見通しが立たない状態でスタートすることも多く、いきなり本開発にコストをかけすぎると、失敗した際の損失が大きくなってしまいます。
しかし、リーンスタートアップでは、必要最小限の機能を搭載したプロダクト(=MVP)を短期間で開発し、改善を繰り返す完成形へと近づけるため、新規事業の成功率を高めることが可能です。
つまり、リーンスタートアップに欠かせないプロセスのひとつにMVP開発があります。
MVP開発やPoCにはノーコードが最適
MVP開発とPoCには明確な違いがあるものの、どちらも小規模ビジネスや新規事業立ち上げに際して、本開発のコスト削減や失敗リスク軽減といった効果をもたらします。
ただし、MVP開発もPoCも本開発前の試験段階で実施されるため、あまり多くの時間やコストを割くことはできません。そこでMVP開発やPoCに効果的な方法が、ノーコード開発です。
ノーコードツールは専門知識不要で開発できるため、IT人材を調達・育成する必要がなく、既存の人材を活用できます。
また、ノーコードツールを活用し、約1週間で開発・リリースに成功したサービスがあるなど、短期間での開発も実現可能です。
そのため、MVP開発やPoCの実施を検討していて、あまり予算をかけられないといった場合は、ノーコードツールの活用を視野に入れてみてください。
まとめ
MVP開発は必要最小限の機能を搭載したプロダクトを開発することで、PoCはアイデアの実現可能性を検証することです。どちらも新規事業の立ち上げ時に実施されることが多いため、混同されやすい傾向にあります。
ただ、2つには目的・検証対象・得られる効果の3点に明確な違いがあるため、それぞれの意味を正しく認識しておきましょう。
ただし、MVP開発もPoCも新規事業を成功させるために重要なプロセスのひとつです。MVP開発やPoCを実施し、無駄のない効率的な本開発を実現してください。