プログラミング知識がなくてもシステム開発を行えるとして人気が高まりつつあるノーコードですが、具体的にどのようなことができるのか知らない方は少なくありません。そこで、本記事ではノーコードツールでできることとできないこと、活用事例などを詳しく紹介していきます。
ノーコードツールでできること4つのこと
ノーコードツールでできることには大きく以下の4つが挙げられます。1つずつ詳しくみていきましょう。
- アプリ・サービス開発
- Webサイト制作
- ECサイト制作
- 業務効率化
アプリ・サービス開発
ノーコードツールでは、アプリ・サービス開発が可能で、ノーコードにもかかわらず簡易的なものから高度なものまで幅広く開発できます。ノーコードツールで開発できるアプリ・サービスの例としては以下のようなものが挙げられます。
- 学生と企業のマッチングアプリ
- M&Aマッチングサイト
- サッカーファン向けのSNSアプリ
- 言語学習向けのeラーニングサービス
- 地元レストランの検索サービス
- 公園マップ
また、アプリ・サービスを開発する前段階で実施するMVP開発にも、ノーコードツールが効果的です。
はじめからさまざまな機能を搭載したアプリ・サービスを制作しても、成功するとは限りません。そのため、MVP(試作品)を制作し、効果や反応を見てから次の施策を検討するという流れがビジネスを成功へと導きます。
このように、ノーコードツールはアプリ・サービスの本格的な開発からMVP開発まで幅広く対応できます。
Webサイト制作
ノーコードツールではクオリティの高いWebサイト制作も可能です。制作できるWebサイトとしては以下のような種類が挙げられます。
- コーポレートサイト
- オウンドメディア
- サービス・ブランドサイト
- LP(ランディングページ)
- 採用サイト
本来、Webサイト制作にはHTMLやCSSといったプログラミング言語が必須ですが、ノーコードツールを活用すれば、プログラミング知識がなくてもプログラミング言語を用いて制作したWebサイトと同等レベルのWebサイトを制作できます。
また、アイデアの実現性や効果を検証するPoCにも、ノーコードツールの活用が効果的です。例えば、LPを利用してサービス検証(PoC)を進める際にノーコードツールを活用した場合、制作時間を短縮できるため、検証に多くの時間を割けるようになります。
このように、ノーコードツールではプログラミング知識なしでさまざまなWebサイトを制作できるうえ、PoCの実施にも最適です。
ECサイト制作
ノーコードツールでは、商品ページ・カート・お気に入り・決済など、さまざまな機能を搭載する必要があるECサイトの制作も可能です。
カート機能や決済機能などをソースコードの記述で制作するとなると、複雑なうえ手間がかかる反面、ノーコードツールを活用すればソースコードを記述することなく複雑な機能を搭載できます。
また、ECサイトはビジネス環境やユーザーニーズの変化に合わせて定期的なメンテナンスが必要です。ノーコードツールで制作したECサイトであれば、簡単な操作のみでメンテナンスを行えるため、ECサイトの制作だけでなく運用にも向いているといえます。
業務効率化
ノーコードツールは、複数のツールを連携させたり業務効率化のためのシステムを開発したりするなど、業務効率化にも役立ちます。
例えば、Googleフォームで問い合わせを受け付けた際、「Gmailでユーザーへ受付完了メールの送付」「Googleスプレッドシートに問い合わせ内容を記載」「Gmailで担当者へ通知」など、一連の業務を自動化することが可能です。
ほかにも、データベースの構築・管理やWebサイトから特定の情報を収集するWebスクレイピングなどのシステム開発も行えます。
このように、ノーコードツールを活用すれば、「アプリ・サービス開発」「Webサイト制作」「ECサイト制作」以外にも、社内の業務効率化を実現することが可能です。
ノーコードツールではできないこと
ノーコードツールは、プログラミング言語をはじめとする専門知識がない場合でも、システム開発を行えるような設計になっているため、複雑・高速・独自といった特徴を持つシステムの開発には不向きです。
ソースコードを自由に記述する開発手法に比べると、デザインの自由度や機能の拡張性が優れていないため、大規模な開発には向いていません。
しかし、大規模な開発の準備段階としてPoCやMVP開発には、コストをかけず短期間での開発が可能なノーコードツールの活用が最適です。
ノーコードツールを活用してPoCやMVP開発を行い、その結果として大規模なシステムが必要なぐらい市場において需要があると分かれば、そこからスクラッチ開発でサービスを大きくするケースもあります。
そのため、開発したいシステムの種類や規模、導入する目的を明確にしたうえで、ノーコードツールが目標達成に役立つかを見極めることが大切です。
ノーコードツールの活用事例3選
ノーコードツールで開発されたアプリ・サービスの事例を3つ紹介します。
kitene|Twitter特化型の人材マッチングアプリ
出典:シースリーレーヴ株式会社「Kitene」
kiteneは、Webページ上から「募集をつくる」だけで、リアルタイムでTwitterユーザーに訴求できる人材マッチングアプリです。企業や個人事業主まで、誰でも簡単に募集を掲載できます。
人材採用だけでなく、何かを教えてもらうために専門知識を持った人を募集したり、イベントを開催するにあたって参加者を集めたりするなど、幅広く活用できる点も特徴です。
約1か月という短期間かつ開発人数はわずか3人という低コストで開発されており、ノーコードツールの魅力を活かした事例といえます。
LIBRIS|本屋・ブックカフェの検索アプリ
出典:株式会社LIBRIS「LIBRIS」
LIBRISは、本屋やブックカフェを検索できるWebアプリで、「食べログ」の本屋版といったイメージです。
各店舗の詳細ページでは営業情報だけでなく、各種SNSアカウントと連携したリアルタイムの情報を表示することもできます。また、他サービスと連携して、複数の店舗を横断した本の在庫検索をする機能も搭載されています。
LIBRISの開発者は非エンジニアで、副業のような形で取り組み始め、約1年かけて開発されました。このように、LIBRISは非エンジニアであっても機能性の高いWebアプリを開発できるという成功事例です。
SmartDish|外食における待ち時間がなくなるサービス
出典:株式会社カーチ「SmartDish(スマートディッシュ)」
SmartDishは、外食における待ち時間をなくし、ランチ時間を充実させるためのサービスです。アプリ内で事前に注文と会計を済ませておくことで、お店で提供を待つ時間や会計を待つ時間など、飲食店における待ち時間のストレスを軽減してくれます。
7月の開発開始からiOS版とAndroid版の2種類のアプリを正式リリースするまではわずか2か月と、圧倒的なスピードで開発が進みました。
開発から1か月でMVPを開発し、個人経営のイタリアンレストラン店長にフィードバックをもらいながら、検証と改善を繰り返したといいます。
このように、SmartDishはノーコードツールを活用して最短でMVPを開発したことで、検証と改善に多くの時間を割くことができ、より質の高いサービスを開発できた成功事例です。
ノーコードとローコードの違い
ノーコードと混同されやすい開発手法に「ローコード」がありますが、ノーコードとローコードでは、ソースコードの記述量が異なります。
ノーコードは、ソースコードを一切記述する必要がなく、基本的にはドラッグ&ドロップをはじめとする直感的な操作のみでシステム開発を行えるのが魅力です。そのため、非エンジニアでも0から開発できます。
一方のローコードは、ソースコードをほとんど記述する必要がない反面、必要最低限のソースコードを記述する必要があるため、ある程度のプログラミング知識が必要となります。
しかし、自らで一部ソースコードを記述するため、ノーコードに比べるとデザインの自由度や機能の拡張性には優れている点が魅力です。
このように、ノーコードとローコードではソースコードの記述量が異なり、その違いによって必要な知識・自由度・拡張性なども変わります。そのため、自社が開発したいシステムやリソースに合わせて、ノーコードとローコードのどちらが最適かを見極めることが大切です。
ノーコードツールを活用するメリット
ノーコードツールを活用するメリットには以下の3つが挙げられます。1つずつ詳しくみていきましょう。
- 開発に専門知識が必要ない
- 開発にかかるコストを抑えられる
- 短い期間での開発が実現する
開発に専門知識が必要ない
ノーコードツールではソースコードを記述する必要がないため、専門知識がなくてもシステム開発を行えます。外部に発注することなく、社内での開発が可能となるため、より手軽にシステム開発を行えるでしょう。
また、社内でシステム開発を行うにあたってエンジニアやプログラマーを確保できなければ、社内での人材育成や学習コストがかかってしまいます。しかし、ノーコードツールを活用すれば、専門知識が必要ないため、学習コストを抑えられる点もメリットです。
開発にかかるコストを抑えられる
ノーコードツールを活用すれば、非エンジニアでもシステム開発を行え、社内で完結できるため、外部のエンジニアに発注するコストを抑えられます。また、システム開発を行うにあたってエンジニアやプログラマーを新たに採用するコストの削減も可能です。
IT人材が不足している現在、外部のエンジニアに発注したり採用したりするには、数十万・数百万といった高額なコストをともないます。しかし、ノーコードツールを活用することで開発にかかるコストを最小限に抑えられるため、低コストでのシステム開発が実現します。
短い期間での開発が実現する
ノーコードツールを活用すれば、ソースコードの記述・専門知識の学習・外部への発注・採用などの時間を削減できるため、短期間での開発が実現します。
ビジネス環境やユーザーニーズが急速に変化する現代において、最短でシステム開発を行うことができれば、需要の変化を原因に開発が無駄になることなく、競合より優位に立てる可能性も高まります。
まとめ
ノーコードツールでは、「アプリ・サービス開発」「Webサイト制作」「ECサイト制作」「業務効率化」などを実現できます。ソースコードを記述する必要がないため、専門知識がなくてもシステム開発を行える点が最大のメリットです。
ただし、ノーコードツールは種類によって向き不向きや得意分野があるため、自社の導入目的に適したツールを選定・導入しましょう。